はじめに

TeX Liveは、pLaTeX本体とフォント、各種ツールが統合されたディストリビューション。他にもいくつかぢすとりびゅーしょんが存在するものの、現状、TeX Liveが世界標準と考えて差し支えない。

TeX Live 2021のWindows版をスクリーンリーダーを利用してインストール、検証してみた。通常の方法でインストールを実行すると、GUIのインストーラーが起動する。このインストーラーをPC-Talkerなどのスクリーンリーダーで操作することはきわめて困難。しかし、コマンドプロンプトからCUIのインストーラーを起動する方法が用意されている。

アンインストールやアップデートも問題なくできることを確認。これからpLaTeXを学んでみたいと思っている方、ぜひとも安心して挑戦してほしい。

インストーラーのダウンロード

Windowsの場合、ISOイメージをダウンロードして、CD-Rなどに焼いてインストールする方法と、インストーラーだけをダウンロードしてネットワーク越しにインストールする方法が用意されている。今回は後者の方法でインストールを進めていく。

ブラウザでInstalling TeX Live over the Internet - TeX Users Groupを開き、install-tl.zipをダウンロードする。

次に、ダウンロードしたinstall-tl.zipを任意のディレクトリーに解凍、今回はc:\workという作業ディレクトリーに解凍。c:\work直下に、install-tl-20210411などのディレクトリーが作成されていれば準備完了。

インストール

install-tl-20210411にカレントディレクトリーを移動する。

cd c:\work
cd install-tl-20210411

このディレクトリー内のinstall-tl-windows.batがインストーラーなのだが、そのまま実行するとGUIのインストーラーが実行されてしまい、スクリーンリーダーでは操作不能となってしまう。

そこで、下記のように、-no-guiオプションを付加することで、CUIのインストーラーを起動する。

install-tl-windows.bat -no-gui

======================> TeX Live installation procedure <=====================
↓
(省略)

 <V> set up for portable installation

Actions:
 <I> start installation to hard disk
 <P> save installation profile to 'texlive.profile' and exit
 <Q> quit

ここでqを入力すれば何もせずにコマンドプロンプトに戻り、iを入力すると、直ちに必要なファイルのダウンロードと展開、セットアップが始まる。

私の環境(光回線)では、ファイルのダウンロードに1時間10分、展開とセットアップに30分ほどを要した。ダウンロードファイル名や経過時間などは、逐一音声が出力されるので、PC-Talkerであれば、alt+ctrl+f2で、音声出力をon/offしながら、状況を確認することをおすすめする。

インストールが終了すると、コマンドプロンプトに戻ってくるので、一度コマンドプロンプトを閉じてから、再びコマンドプロンプトを開き、platexが正常に動作していることを確認する。

platex --version

e-pTeX 3.141592653-p3.9.0-210218-2.6 (utf8.sjis) (TeX Live 2021/W32TeX)
kpathsea version 6.3.3
ptexenc version 1.3.9
Copyright 2021 D.E. Knuth.
There is NO warranty.  Redistribution of this software is
covered by the terms of both the e-pTeX copyright and
the Lesser GNU General Public License.
For more information about these matters, see the file
named COPYING and the e-pTeX source.
Primary author of e-pTeX: Peter Breitenlohner.

また、スタートメニューの、すべてのプログラムの中に、TeX Live 2021が追加されているので、念のためそちらも確認しておくと良いだろう。

アップデート

TeX Liveは、頻繁にアップデートが行われる。月に1度くらいをめどに、アップデートすることで、最新の状態を保つことができる。CUIで動作する、tlmgrを実行することで、簡単にアップデート可能だ。

tlmgr update --self --all

tlmgr.pl: package repository https://ftp.yz.yamagata-u.ac.jp/pub/CTAN/systems/texlive/tlnet (verified)
tlmgr.pl: saving backups to C:/texlive/2021/tlpkg/backups
tlmgr.pl: no self-updates for tlmgr available
[ 1/38, ??:??/??:??] update: acmart [3562k] (56946 -> 58867) ... done
[ 2/38, 00:07/03:22] update: aomart [1165k] (56102 -> 58855) ... done
[ 3/38, 00:10/03:37] update: apa7 [760k] (58787 -> 58835) ... done

↓
(省略)


running mktexlsr ...
done running mktexlsr.
↓
(省略)

tlmgr.pl: package log updated: C:/texlive/2021/texmf-var/web2c/tlmgr.log

アンインストール

TeX Liveは、毎年バージョンが2019、2020などと上がっていく。最新のバージョンを利用したいのであれば、一度現バージョンを削除してから、新たに最新のバージョンをインストールする。

アンインストールは、スタートメニューから、すべてのプログラム → TeX Live 2021 → uninstall TeX Liveとたどっていくだけ。コマンドプロンプトを開いて、platexを実行、エラーがかえってくればアンインストールは成功。すべてのプログラムからもTeX Liveのメニューが削除されているはずだ。

ただし、HDD内には、膨大なTeX Liveのファイルがそのまま残っている。エクスプローラーなどで、c:\texliveを手動で削除する。

終わりに

LaTeXというと、主に理数系や化学系の論文を書くためのツールではあるが、ワードやエクセルを持っていない私にとっては、ちょっとした手紙やメモなど、日常の文書作成に必須なツールとなっている。

現在は、ワードでも、美しい数式や化学式を書くことができるのだと思うが、特に視覚障碍者にとっては、LaTeXは、まだまだ利用価値の高いツールだと思う。

Web上にはLaTeXに関する膨大な情報が蓄積されている。最初はとっつきにくく理解しにくいかもしれないが、もし興味があれば、一度挑戦してみてはいかがだろうか。

参考資料


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